148:西狩丸

金谷家に代々伝わる笙があります。
その名も「西狩丸(にしかりまる)」。1706年(宝永3年)辻近家作。


匏(ほう)や頭とよばれる部分には鮮やかな麒麟の蒔絵がほどこされており、雅な姿を今に残しています。

日光東照宮に奉職した楽人は「日光楽人」と呼ばれ、家光の命によって京都から指導役が十数回来晃して、この指導にあたりました。
金谷家は、初代の金谷外記忠雄(げき ただお)が天海僧正の命を受け、以来200年に渡って楽人をつとめました。
この笙の作者の辻近家(つじ ちかいえ)は京都の楽人で、日光楽人へ秘曲「東遊(あずまあそび)」の伝授にあたった人物です。
その近家から伝授を受けた金谷家三代の金谷帯刀壽雄(たてわき ひさお)がこの笙を所持し、以来代々金谷家に伝えられたもので、後の1735年(享保20年)には輪王寺宮・公寛法親王から「西狩丸」の銘を賜りました。

300歳を越えるこの楽器が、クラシックホテルと東照宮、西洋と日本、近代日光と江戸期をそれぞれ繋ぎ、若き金谷善一郎の志とその後の起業ストーリーを物語る貴重な銘品であり遺産になっています。
まさに金谷の「宝物」です。

【関連項目】
17:笙


46:楽人
楽人

2:金谷善一郎
金谷善一郎

61:笹竜胆
笹竜胆