
1873年(明治6年)、東照宮の楽師をしていた金谷善一郎が、ヘボン式ローマ字綴りを考案したアメリカ人、
J.C.ヘップバーン(ヘボン)博士の知遇を得て、自宅の一部を外国人の方の宿泊施設とした
「金谷カッテージ・イン」を開業したと伝えられています。これが「金谷ホテル」の始まりです。
当時の日本には長期のバケーションといった慣習も、リゾートという概念も、
ましてや洋食(肉食)といったものすらない、そんな時代にホテルとして歩み始めました。
1878年(明治11年)には、ヘボン博士の紹介によって
「金谷カッテージ・イン」に訪れた英国人旅行家イザベラ・バード女史がつづった
「日本奥地紀行」や、当時の在日英字新聞などで紹介されるや、
「金谷カッテージ・イン」は「日本のリゾート避暑地=日光」のホテルとして、
地位を確実なものとしました。
そして1893年(明治26年)に、日光山内をのぞむ現在地に、
2階建て洋室30室の「金谷ホテル」として営業を開始します。
その後、1902年(明治35年)に栃木県で最初に電話に加入、1908年(明治42年)に自家用水力発電所の設置をはじめ、
外国製洗濯機を取り入れての洗濯場の設置(明治45年)、ボイラーの設置による給湯と暖房設備の導入(大正3年着工、
同7年完備)など、ホテル設備・サービスの充実を他に先駆けて着手、黎明期の日本ホテル界の先頭を歩んできました。
大正時代に入り日光御用邸が開設されると、日光は国内外の要人の交歓・社交の場としてさらに発展。
「金谷ホテル」も、1922年(大正11年)の英国皇太子殿下のご宿泊をかわきりに、外国王室、
国内宮家のご宿泊という栄を受けるようになりました。
その後も、別館(昭和10年)、第二新館(昭和36年)の増築、開業当初の趣を残しながらも近代的ホテルとして
今日に至っています。金谷ホテルは、明治から、大正、昭和、そして平成の現在まで、ホテルを支えてきた
沢山のスタッフの想いを今に伝えながら、その中から新しい文化を発信する場としてのホテルを目指しています。
西暦 | 和暦 | 金谷ホテルの出来事 | ||
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黎明期 | 1871 | 明治4 | 東照宮の楽人「金谷善一郎」、ヘボン博士を自宅に泊める | ![]() ![]() |
1873 | 明治6 | ヘボン博士の勧めにより、四軒町(今の日光市本町)の自宅の一部を「金谷カッテージ・イン」として、外国人向けの宿泊施設として開放 | ![]() |
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1878 | 明治11 | イザベラ・バード、来館 | ![]() |
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1893 | 明治26 | 現在地に金谷ホテル(本館)を開業(2階建て30室) | ![]() |
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1897 | 明治30 | 高級食器保存のため土蔵を作る | ||
1901 | 明治34 | 新館落成(1階に大食堂(現在のバンケットホール)、2階に客室10室) | ![]() |
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1902 | 明治35 | 電話に加入(日光1番) | ||
1908 | 明治41 | 自家用水力発電所を設置(ドイツシーメンス社製) | ![]() |
発展期 | 1914 | 大正3 | 金谷善一郎の長男「金谷眞一」、横浜でフォード車を購入 ボイラー室設置。客室給湯、スチーム暖房開始 |
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1916 | 大正5 | ホテル内スケートリンク設置 | ![]() |
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1921 | 大正10 | 竜宮(観覧亭・展望閣)建設 | ||
1926 | 大正15 | 畜産部を設置。牛乳、バター、野菜などの自給 | ![]() |
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1935 | 昭和10 | 別館落成(3階建て24室) | ![]() |
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1936 | 昭和11 | 本館を改造、地面を掘り下げて3階建てに | ||
1939 | 昭和14 | プール新設 | ![]() |
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1940 | 昭和15 | 日光観光ホテル(現在の中禅寺金谷ホテル)開業 | ![]() |
戦中戦後 | 1945 | 昭和20 | 日光金谷ホテル、日光観光ホテル、米軍に保養所として接収される | ![]() |
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1950 | 昭和25 | 米軍接収下の日光観光ホテル全焼、のち再建 | ||
1952 | 昭和27 | 日光金谷ホテル接収解除、一般営業開始 | ||
1957 | 昭和32 | 日光観光ホテル接収解除、一般営業開始 |
現代 | 1961 | 昭和36 | 第二新館落成(5階建て16室) | |
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1965 | 昭和40 | 日光観光ホテル、中禅寺金谷ホテルに改称 | ||
1966 | 昭和41 | 発電所廃止 | ||
1970 | 昭和45 | 金谷ホテルの製菓、製パン部門が分社独立(現:(株)金谷ホテルベーカリー) | ||
1986 | 昭和61 | 中禅寺湖畔にコーヒーハウス「ユーコン」を開業 中禅寺金谷ホテル敷地内に温泉浴室棟を新設 |
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1992 | 平成4 | 中禅寺金谷ホテル建て替え落成 | ![]() |
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2003 | 平成15 | 創業130年を機に、百年カレーや大正コロッケットなど古いメニューをいくつか復刻 | ![]() |
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2004 | 平成16 | 中禅寺金谷ホテルの温泉棟に露天風呂(空ぶろ)を増設。 | ||
2005 | 平成17 | 日光金谷ホテルの本館、新館、別館、竜宮が国指定登録有形文化財に登録 | ![]() |
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2006 | 平成18 | 日光金谷ホテル、耐震補強及び内部改装工事の実施 | ||
2007 | 平成19 | 日光金谷ホテル、近代化産業遺産に認定 | ||
2011 | 平成23 | 中禅寺金谷ホテル「空ぶろ」温泉棟を建て替え | ![]() |